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9月20日一般質問「ケアラー支援について」

9月20日令和5年第3回定例会でのあらい絹世県議による一般質問を掲載させていただきます。

以下が内容です。

 

あらい絹世議員 質問:

 

福祉サービスは市町村が実施主体となっており、複合的な課題を抱えるケアラー・ヤングケアラーのいる家庭を、市町村が支援していくことが必要であるが、まだ市町村の支援体制も縦割りのままであり、ケアラー・ヤングケアラー支援で各分野の横串を通すところまでいっていないところが多いのではないか。

 

現に、わが会派が市町村に行ったアンケートにおいても、体制づくりや人材育成について県への支援を期待する声が多かった。

県として、市町村の状況をしっかりと把握した上で、専門的・広域的な立場から市町村のケアラー・ヤングケアラー支援を後押ししていく必要があるのではないか。

そこで、ケアラー・ヤングケアラー支援について、今後どのように市町村を支援していくのか、見解を伺う。

 

黒岩知事 答弁:

あらい議員の御質問に順次お答えしてまいります。

はじめに、ケアラー支援についてお尋ねがありました。

ケアラー・ヤングケアラーへの支援は、最も身近な市町村が主体となり、福祉・教育・雇用など様々な分野の関係者が連携して、きめ細かく対応していくことが重要です。

県は、相談や困難事例に対応する市町村を広域的、専門的な立場から下支えするため、ケアラー・ヤングケアラー専用の相談窓口の設置や、ケアラー支援専門員による市町村や学校、NPO等の関係機関のネットワーク化などに率先して取り組んできました。

しかし、ケアラー・ヤングケアラーの支援は介護や障害だけでなく、教育や雇用など、多様な分野にまたがることに加え、介護が必要な方が精神疾患や外国籍の場合など、専門性が高い事例も多いことから、県は市町村の取組を後押ししていくことが必要です。

そこで県は、これまで蓄積したケアラー支援のノウハウを、市町村や地域の支援機関が集まる研修会等で共有するとともに、参加者から現場での課題を把握し、解決に向けて意見交換を行っていきます。

また、市町村が様々な支援を総合的にコーディネートできる人材を配置できるよう、養成研修の実施を検討していきます。

さらに、市町村単独では対応が困難な事例には、県のケアラー支援専門員が関わり、市町村の担当職員と連携して対応していきます。

こうした取組を本年度改定する「かながわ高齢者保健福祉計画」に位置付け、市町村のニーズに応じた的確な支援に努めます。

県は、ケアラー・ヤングケアラーが安心して自分の希望する人生や日々の暮らしを送れるよう、市町村とともにしっかりと取り組んでまいります。

 

(要望)

まず、ケアラー・ヤングケアラー支援についてであります。

今年7月に横浜地裁小田原支部で、ある事件に対して、懲役3年という実刑判決が言い渡されました。これは、去年、神奈川県大磯町の海に40年介護を続けてきた妻を車椅子ごと突き落として殺害したとして、殺人の罪に問われた82歳の夫に対して言い渡されたものです。ある報道によると、この事件では、40年間介護を一人で担ってきた被告は「自分は頑固者で、人の意見を聞かない性格で、誰にも迷惑をかけないで一人で面倒を見るという意識があった。なぜ息子やケアマネジャーに本音をぶつけて相談しなかったのか」と後悔を口にされたそうです。

介護による殺人や心中は、メディアで確認できるだけでも、年間40件ほど生じていると言われ、このような事件は誰にでも起こりうることであります。介護する立場になったときに、周囲の人たちに「助けてほしい」と発信することが大切であり、ケアラーに対して悩みを聞いたり、介護の苦労を分かち合ったりといったサポートをさらに充実させていく必要があります。

日本には、要介護者を支援するための介護保険法はありますが、ケアラー・ヤングケアラーを包括的に支援する法的基盤は整っていません。また、介護は一義的には市町村が担うものであるため、ケアラー・ヤングケアラー支援も合わせて市町村が一義的に行うこととなります。

しかし、多分野にわたるケアラー・ヤングケアラー支援体制のモデルケースを県として示して、市町村の体制構築を支援することを要望いたします。

さらに、本県において、ケアラー・ヤングケアラーの社会的認知度向上を目指して、当事者自身の理解の向上、行政関係者や専門職、県民への周知を、計画にも目標を盛り込むなどしていただきたいと思います。

そして、一人のケアラー・ヤングケアラーも取り残さない社会を目指して、安心して暮らせる地域社会を目指していくことを要望いたします。